市場よりお届けします。
最近は蒸し暑かったり、いきなり雨が降ってきたりと落ち着かない毎日ですが、いかがお過ごしでしょうか?
7月に入り、新潟の三面川でアユ漁が解禁となり、市場にも入ってきております。
さて、川釣りはまったく経験のないNですが、先日、井伏鱒二の『川釣り』という本を読んだのでご紹介します。井伏鱒二は1993年までと、最近まで生きていた方で、有名な作品は『黒い雨』です。恐らく井伏鱒二という名前は知らなくても、戦時のことを扱った作品ですので、映画やドラマ等でこの書名だけは知っているという方もいるかもしれません。
さて、『川釣り』ですが、小説ではなく随筆です。文章自体は飄々とした感じで、読みやすいものとなっております。釣り経験のほとんどないNでもゆるりと読めました。太宰治がちょこっと出てきたときには驚きましたが。
それでも最初の「渓流」と題された短い文章で、アユが釣れない時に、糸の先に石を結び付けて、釣り真似をしてごつごつと手ごたえを楽しんでいる様子が書かれると「そんなに釣れた時の感触を楽しみたいもの?」と思ってしまうのですが、そのあとに
カワセミのやつ
羨ましそうに見ているぞ
(p.8)
なんて言葉が出てくると、竿を垂らしながら、ニヤニヤと笑っている井伏さんが思い浮かんできます。「渓流」以外にも釣れない時の心境を書いた「不漁雑記」やワサビ盗人を捕まえようとする「ワサビ盗人」などの捕り物もあります。興味のある方はどうぞ!
ちょっと前ですが、家で稚アユを焼いて食べたときに、Nは「あぁ、アユってこういう(ちょっと苦い)味だよね~」なんて思いながらなんとなく食べていたのですが、一緒に食べてた嫁さんは「懐かしい~、おいしい!」と言いながら嬉しそうに食べていました。何でそんなに感じ方に違いが出たんだろうと思い、聞いてみると、嫁さんは子どもの時にアユのつかみ取りとかして楽しかった記憶があるそうです。Nは子ども時代にそういう経験がなかったのですよね~。もっぱら海魚で育ちましたし。やっぱり好みの味って、子どもの時の記憶に影響されるんだなぁと思ったNでした。
願わくば、卸している魚が誰かの幸せな記憶につながっていますように。
遅まきながら、織姫と彦星に願掛けしておきました☆
以上、市場からお届けしました。
参考文献
井伏鱒二、『川釣り』、岩波書店、1990年。
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